TR-C-0114 :1995.4.12

石若通利

通信サービス要求記述への自然言語の適用

Abstract:高度情報化社会の展開に伴い通信サービスに対する要求は多様化し、この多様な要求へ迅速に対 処することが望まれている。このため、通信サービスを開発する早期の段階で要求を明確にし仕様として定義し検証する方法の確立が求められている。これまでに仕様の明確な定義とその機械的な検証の実現を目的に多くの仕様記述法が提案されている。例えば、CCITT(International Telegraph and Telephone Consultive Comitte)勧告のSDL(Functional Specification and Description Language)[1]、ISO(International Organization for Standardization)勧告のLOTOS(Language of Temporal Ordering Specification)[2]及びEstelle[3]、当ATR通信システム研究所で開発されたSTR(State Transiton Rules)[4]等がある。さらに、これらの形式的仕様記述言語に基づいた開発支援システムでは、仕様検証[5]やプログラムの自動生成[6]が実現されている。 しかし、これらの形式的仕様記述言語は通信サービス開発の専門家を対象とした記述法であり、要求の源泉である通信サービス利用者が要求を記述するためには不向きであった。そこで、利用者が要求を記述する手段に自然言語を用いることで記述容易性の向上が期待できる。さらに、自然言語で記述された要求でも通信サービス仕様としての明確な定義と検証を可能とする手法の確立が切望されている。 自然言語記述の計算機処理はこれまでにも多くの研究が行なわれており、その問題点の指摘と解決策の提案がある。なかでも自然言語記述の意味内容を特定する際に問題となる曖昧性を、効果的に解消する方法は依然として困難で重要な課題である。 本研究では、通信サービス要求記述への自然言語の適用を念頭に置いて、これまでの自然言語処理研究を処理目的の違いから以下の二つの観点から分類し、研究動向を整理する。

・機械翻訳等のように自然言語記述から自然言語記述への変換過程で問題となる曖昧性と解消方法の研究動向

・自然言語インターフェイス等のように自然言語から特定の目的のために構築された計算機システムで採用している人工言語記述への変換過程で問題となる曖昧性と解消方法の研究動向

さらに、通信サービス要求の自然言語記述を計算機処理する際に問題となる曖昧性とその解消を実現するための課題を考察し整理する。