TR-C-0110 :1995.3.20

原田良雄

STR手法と通信サービス競合(非決定性)検証に関する考察

Abstract:近年,電気通信分野での著しい技術革新の進展と通信サービスの普及に伴い,通信サービスに対する利用者の要求が多様化・高度化している.このような需要に対して,迅速な新規サービス開発と提供が必要となり,通信ソフトウェアの効率的かつ迅速な開発技術の確立が早急の課題となっている.通信サービス設計においては,新規サービス単独の動作仕様を規定するだけでなく,新規サ—ビス仕様と既存サービス仕様との相互作用(サービスインタラクション)を解析し,サービス仕様間に生じる矛盾を解消し,サービス全体として矛盾のない仕様を作成する必要がある.ところが,一般に,相互作用の数は,既存サービスが増えると組合せ的に増大し,その相互作用に隠れたサービス仕様矛盾の検証は,人手で行う事のできる範囲を越えた作業となっている.相互作用解消の問題は,1991年12月,CCITTによってインテリジェントネットワークのための技術的勧告として提示されたCSI(IN Capability Set1)においても,今後の重要な課題のひとつに挙げられている[1-2]. サービス相互作用解析を機械的に支援するためには,まず,通信サービス仕様を形式的に記述する必要がある.通信サービス仕様の記述範囲は,システムをブラックボックスとみなし端末の動作に着目した動作を対象とし,サービス動作を形式的な規則形式により記述する手法(STR :State Transition Rule)を提案している[9-11].また,STR手法を用いて通信サービスは記述されていることを前提とし,新規サービスと既存サービスからサービス合成動作を作成し,そのサービス合成動作を基盤に相互作用に含まれる矛盾検出支援方式を提案している[14-16].それらのまとめについては,研究の目的,設計・検証支援機能の詳細なアルゴリズム,評価および考察を含めてテクニカルレポート[21]に述べているまた,STR記述仕様については文献[12]にまとめている. 本レポートでは,STR手法の記述性と通信サービス競合(非決定性)検出における状態列挙の違いに着目して補足説明する. 第2章では,STR記述手法について,記述範囲,記述性について議論する. 第3章では,通信サービス競合(非決定性)検出支方式の概要について述べ,2規則の競合判定に用いる状態の列挙の方法の違い(任意端末の状態列挙と複数端末状態列挙の方法)による利点と欠点について議論し,処理時間を考慮した融合案を示す. 第4章では,まとめについて述べる.