Masaki HAMADA
設計知識の構造化と活用
Abstract:ソフトウェアの影響波及解析を容易化するための手法を提案する.
保守者にとって,ソフトウェアの修正箇所を限定する影響波及解析は,設計の根拠が残されていな
いため困難な作業になる.この問題点を解決するには,影響波及解析に有用な,
設計の根拠の情報を小さいコストで記録,利用する方法を確立する必要がある.
筆者らは,この方法を実現したのでここに提案する.
提案する手法では,設計者が設計プロセスの記録を作成しながらソフトウェアを設計する.
この記録は,設計の根拠である,設計に影響を与えた要因の情報を含む.
保守者は,本手法が実現する設計プロセスの記録の検索機能により,影響波及解析に有用な情報を参照す
ることができる.また,設計プロセスの記録は,設計の思考の流れに沿って作成するため,
記録のコストが小さいことが期待できる.
以上の手法を実現したプロトタイプシステムDIGを試作し,試用・評価を行った.
その結果,設計工数が設計プロセスの記録により約40%増えるのに対し,ソフトウェアの修正工数を
従来の15%以下にできる見通しを得た.また,設計プロセスの記録の内部に付けられた索引と関連
付けの情報が,影響波及解析に設計プロセスを利用する上で有効であることを確認した.
但し,設計プロセスの記録では,設計者の頭に記憶されている情報について,利用関係が記録しにくい等の
問題点があることがわかった.今後は,この問題点を解決するため,過去の設計プロセスを再利用した
設計プロセスの記録コストの低減および記録情報の質を安定化させる手法を検討する.