TR-C-0055 :1990.8.28

加納康男

ユーザモデルを用いた知的文献検索システムの仕様

Abstract:本実験システムは、文献データベースに対する日本語で記述されたあいまいな問合せ文を理解し、それに基づく検索を行なうとともに、その性能を評価するためのものである。このために、本システムでは次のようなアプローチを採用している。 ユーザモデルの導入: ユーザモデルは、利用者単位の個人用シソーラスのことである。これに利用者独自の言葉や検索要求の意味構造を持たせる。 ユーザモデルを使用した問合せ文の理解: 問合せ文の理解は、ユーザモデルの中から利用者の検索意図に照応する部分構造(意味構造と呼ぶ)を抽出することに対応する。この照応作業により、あいまいな問合せ文の理解を行なう。 システムは、利用者各々に対して、1つのユーザモデルを持つ。ユーザモデルを用いることによって、利用者独自の言葉を理解するとともに問い合わせ文に現れなかった検索要求を推論して補完することが可能となる。 あいまいな問合せ文の検索意図は、次のようにして抽出できる。 (1)問合せ文に直接表明されている検索意図。 (2)システムと利用者との対話を通して、利用者が表明する検索意図。 (3)システムの検索結果から利用者が選択した文献を解析することによって発見される検索意図。 本システムでは、文献データベースはキーワードにより索引付けされた、従来型のものとしている。問合せ文の理解は、上記の検索意図を抽出し、それに相当するキーワード集合およびそれを用いた論理式に変換することである。 また、本文献検索システムに対しては、従来より文献検索の指標として用いられている文献検索効率だけではなく、問い合わせ理解に対する指標としてより直接的なキーワード検索効率を用いた評価を行ない、その有効性を示す。