TR-C-0043 :1990.2.8

柴田健次

演繹的学習について

Abstract:近年、知識処理システムであるエキスパートシステムは、実用化システムヘと移行しつつあるが、知識獲得に要する労力が多大であるという問題が生じている。ソフトウェアの開発を対象としたエキスパートシステムにおいても例外ではなく、要求の理解からソースコードの作成にわたる広い範囲で自動化のためにはかなりの困難を伴っている。つまり、領域専門家自身が、問題解決に必要な知識を体系的に持っていないことや、明確な知識として確立されていないことが原因となり、知識獲得がボトルネックとなっている。このような状況から、システム自身が問題解決を通し、知識を学習していくことが要求されてきている。 特定の例から一般化された概念を形式化する問題は、長い間機械学習における研究の中心にある。ほとんどの過去の研究は一般化に経験的な手法を取っているが、この一般化は、領域特定の知識を使わずかなりの量の例を用いて行っている。しかし、ここ数年、領域特定の知識を適用し、単一の例から適切な一般化を行う手法が開発されてきている。 本稿では、このような演繹的学習の一つである説明に基づく学習(EBL: Explanation Based Learning)に注目し、説明に基づく学習とはどのようなものかを実際のアルゴリズム及びそれを使った実際の例を用い解説する。また、説明に基づく学習自身の有する問題についても触れておく。