TR-C-0042 :1990.2.28

西田臣一,ダニエル・リー,岸野文郎

3次元形状の再構成手法について

Abstract:本報告は、1988年3月から1990年2月までの2年間、(株)ATR通信システム研究所知能処理研究室において、3次元形状の再構成について行なった検討結果をまとめたものである。 近年、コンピュータ・グラフィックス,ソリッド・モデラー等の発展にともない、イメージされるさまざまな形状をより高度に表現できるようになってきた。また、計測技術の進歩により、自然物体の3次元形状を自動的に計測するさまざまな方法が提案されている。しかし、それらの計測手法の多くは、計測精度を上げるとデータ量が多くなるという問題を持っており、形状データから物体を再構成する最適な方法はまだ見つかっていない。 過去に、計測データをもとに立体形状をどう表現すればよいかを検討した例は少なく、Schmittらにより提案されている、分割手法を用いた物体再構成の方法は非常に良い方法だと思われるが、まだまだ多くの問題点を持っている。 そこで本研究では、複雑な物体の3次元形状をより精度良くデータ入力し、より少ないデータ量で形状の複雑さに適応した物体モデルを構築するため、光切断法で得られた形状データをもとに、特徴点を抽出して三角パッチで物体を再構成する方法と、subdivisionの手法を利用して曲面パッチで物体を再構成する方法について検討した。 また、その結果を人間の目で確認するため、Wave Front, iris4D /80GT(GT Graphics Library)を利用してシェーディング等を行ない、再構成された物体を評価した。 本文では、以上のテーマについて、3章に分けて検討結果を報告する。 まず、第2章では、光切断法の3次元形状計測原理と、円柱座標系(r,θ,z)を使用した3次元形状データの作成方法について述べる。このシステムを利用すると、円柱座標系のθ方向,z方向に対して、任意のサンプリング間隔で形状データを作成することができ、Wave Frontを用いて表示することが可能である。 次に、第3章では、特徴のある部分を抽出して三角パッチを生成するという手法を用いて、少ないデータ数で立体形状を再構成する方法について述べる。 表面形状が滑らかに変化していて、ある部分で大きく形状が変化したと考えると、z軸に垂直な断面の面積も大きく変化すると考えられる。そこで、断面積が大きく変化する部分を取り出し、さらにその断面形状を近似することにより、3次元形状の近似表現が可能になる。 次に、第4章では、光切断法とBezier曲面の特徴をいかした階層的に分割を行なうSubdivisionの手法を用いて、曲面パッチで立体形状を再構成する方法について述べる。 平面パッチによる物体の再構成は、単純な物体に対しては非常に良い結果が得られるが、複雑な物体に対しては、滑らかさがなくなりデータ数が多くなる。これを解決するため、Subdivisionの手法を用いて曲面パッチで立体形状を再構成した。普通にSubdivisionの手法を用いると、曲面間の接続が困難であるとか、分割する必要のない曲面を分割してしまうとか、厄介な問題が存在する。この問題を光切断法とBezier曲面の特徴をいかして解決した。 最後に、第5章では、全体のまとめと今後の課題について述べる。