TR-C-0026 :1989.2.28.

西野治彦,秋山健二,小林幸雄

光切断法による3次元形状の自動入力

Abstract:本報告は、1987年3月から1989年2月までの2年間、(株)ATR通信システム研究所知能処理研究室において、光切断法による3次元形状の自動入力について行った検討結果をまとめたものである。 3次元コンピュータグラフィックス画像、あるいは、立体アニメーション等を作成するには、個々の物体の形状・テクスチャ・材質等のデータを登録した3次元物体データベースを構築する必要がある。現在、実際の物体の形状データを入力するには、3次元ディジタイザ等を使用して、物体表面上の一点一点の座標を人手で登録する方法が一般的であり、多大な時間・労力を要しているのが実情である。したがって、こうした物体形状データの入力作業の自動化が強く望まれているが、現在のところ、複雑な形状の物体に対しても十分満足できる自動入力装置は、実現されていない。一方、コンピュータビジョンやロボティクス等の分野においては、非接触な手法で距離情報を計測するさまざまな方法が開発されてい る。これらは、ステレオ視のような受動的な方法と、光切断法・モアレ法・飛行時間測定法のように物体に対して光等を投げかける能動的な方法に分類できる。ステレオ視は、画素間の対応付けに決定的な方法がなく、現在のところ、形状入力のような用途には能動的な方法が有力である。 本研究では、能動的な距離計測法の一種である光切断法を用いた物体形状の自動入力方法、特に、計測したデータからの立体形状の再構成方法、物体表面の平面の抽出方法を検討する。光切断法による3次元計測は、従来からの技術で、今日では産業界でも利用されており、比較的簡単な方法で、かつ、高精度に3次元座標を計測できる。本研究で行った光切断法による形状入力方法は、回転テーブルを利用して物体を回転させながら、物体の全周囲の形状を入力し、三角パッチの集合で立体形状を再構成を行うものである。回転テーブルを用いて、 非接触な計測方法で物体の全周囲の形状データを計測しようとするアプローチは、これまでにも行われているが、計測データをもとに立体形状をどう表現すればよいかを検討した例は少ない。そのうちSchmittらは、計測データをもとに大きな三角パッチを徐々に分割していく表現方法を提案している。本研究では、光切断法で計測したデータをもとに、立体形状を三角パッチの集合で再構成することとし、その節点の発生方法、回転テーブルで物体を回転させるだけでは欠落する形状を補完して、完全な立体形状データを生成する方法等の再構成方法を検討する。また、もう一つの研究テーマとして、光切断法で計測したデータをもとに、物体表面の平面抽出方法を検討する。物体表面の平面が認識できれば、その平面情報を用いて、物体認識や形状の表現方 法に応用が可能である。本研究では、平面の抽出方法として、3次元Hough変換による方法を検討した。従来、3次元空間上の計測点の集合から3次元Hough変換で平面を抽出する方法には、膨大な計算量が必要であった。本研究では、光切断法を用いれば、物体表面上の直線データを収集できることに着目し、 直線データを直接3次元Hough変換することによる平面抽出方法を検討した。本文では、以上のテーマについて、3章に分けて検討結果を述べる。 まず、第2章では、光切断法による形状計測システムと三角パッチによる再構成方法について述べる。回転テーブル上の物体をわずかな角度回転させるごとに光切断法で計測することにより、全周囲の形状を入力する。回転テーブルの各回転角度で計測したデータを折れ線で近似し、各線分の端点から三角パッチの節点を発生させ、隣接する回転角度で計測したデータ上の節点相互間に三角パッチを生成する。このように、第2章では、回転テーブル上の物体について、その全周囲の形状の計測、及び、その形状データの再構成方法を述べる。 次に、第3章では、回転テーブルで物体を回転させるだけでは計測できない部分の形状を補完して、欠落部分のない完全な形状データを生成する方法を述べる。第2章で述べた方法により、全周囲の形状の入力が可能であるが、上部・下部等のスリット光の当り方が弱かった部分、及び、TVカメラから死角となった部分では形状データが欠落する。この欠落した部分の形状を、回転テーブル上への物体の置き方をかえて入力した形状データで補完し、欠落部分のない完全な形状データの生成方法を述べる。 次に第4章では、光切断法で計測したデータから物体表面の直線部分を検出し、その直線データを直接3次元Hough変換する(直線型3次元Hough変換と呼ぶ)ことにより、物体表面上の平面を抽出する方法を述べる。 最後に第5章で、全体のまとめと今後の課題を述べる。