TR-ACR-0007 :2003.5.6

樋口啓介,青野智之,飯草恭一,大平孝

エスパアンテナの数学モデル構築のためのY行列フィッティング

Abstract:自律分散型無線ネットワークは、基地局等のインフラストラクチャに依存しないシステムであり、ネットワークを形成する各端末局は独自に無線送受信機能や中継機能を備える必要がある。そのため従来のネットワークに比べ、無線トラフィック量の増大による周波数資源の枯渇や、端末搭載のための消費電力の低減等の課題が浮上してきている。これらの課題克服のため、周波数資源の有効活用や消費電力の抑制に効果的な指向性アンテナの端末局への搭載が期待されており、我々ATRでは、1本の給電素子とそれを取り巻く複数の無給電素子からなる小型・低消費電力のエスパアンテナ(ESPAR: Electronically Steerable Parasitic Array Radiator)を提案・試作している。 一方、無線ネットワークシステムの設計段階ではスループット等の性能評価が不可欠であり、一般にQualNet、OPNET等の無線ネットワーク用シミュレーションツールが利用され、システム構築時の指標として用いられている。 以上から,自律分散型無線ネットワークの詳細なシステム設計・性能把握のためには,これらのシミュレーションツールに端末搭載可能な指向性アンテナであるエスパアンテナのモデリング機能を組み込むことが重要となる。 本報告は、無線ネットワークシミュレーションツールでのエスパアンテナの数学モデル構築を目的とし、指向性制御に必要なパラメータであるアドミタンスを、モーメント法を用いて計算し、汎用性を持たせるため近似式を用いたフィッティングにて数式化する。