TR-AC-0052 :2001.2.20

廣猟優治,神谷幸宏,大平孝

サブバンド信号処理に基づくアダプティブアレーアンテナ制御アルゴリズムのDSP化に関する検討 並びに、エスパアンテナの解析及びその制御アルゴリズムの開発

Abstract:近年,特に移動体通信システムなどへの応用を目的として,適応型アレーアンテナが注目を集めている.適応型アレーアンテナは,時々刻々と変化する電波環境に適応し,希望波到来方向にアンテナパターンのピークを向けるとともに,干渉波到来方向にヌルを形成して,空間フィルタリングを実現する事が可能である.ゆえに,周波数有効利用の観点から期待が高い[1].このような適応型アレーアンテナとして,サブバンド信号処理を行うアダプティブアレーとエスパアンテナが挙げられる. まず,サブバンド信号処理を行うアダプティブアレーの特徴について述べる. サブバンド信号処理を行うアダプティブアレーは,信号処理を行う信号を一度サブバンドに分割して,サブバンド単位で独立に信号処理することで,並列信号処理を行う.RLS法の計算量は,制御する重み係数の数の2乗に比例して増大するので,サブバンドごとに別々のRLS法を適応すると,計算量を軽減できる.これまで,膨大な計算量が壁となっていたが,サブバンド信号処理はこの解決策として有効であり,実用化も十分期待できる. しかし,サブバンド信号処理を行うアダプティブアレーのような複雑なシステムは無線端末アンテナにはコスト的にも不向きであり,基地局用の適応型アレーアンテナといえる. これに対し,エスパアンテナはサブバンド信号処理を行うアダプティブアレーと比較して非常に低コストで,無線端末アンテナのアダプティブ化を実現する可能性を持っているが,デジタルビームフォーミング(DBF)と違い各素子の入力がモニター出来ず,各素子のウエイトを直接制御できない.このようなことから,従来のDBFの制御アルゴリズムが使用ないので,新たな制御アルゴリズムが必要という課題がある. このような背景から,本報告では基地局用の適応型アレーアンテナとしてサブバンド信号処理を行うアダプティブアレーについて,ユーザ端末の適応型アレーアンテナとしてエスパアンテナについて実用化を念頭に置き検討した.