田野哲
マイクロ波信号処理適応ビーム制御の実現法
- M-CMA (Modified Constant Modulus Algorithm)の発明 -
Abstract:小型・低消費電力が必要とされる移動通信におけるアダプティブアレーの構成法とし
て、マイクロ波信号処理によりビーム形成を行う手法が考えられる。この構成法は従来
必要だった素子数分のRFデバイス、例えば周波数変換器、フィルタ、AGC増幅器等が、
一系統で済み、小型低消費電力で実現できるという利点がある。これを実用に供するた
めに最も重要である、マイクロ波信号処理アダプティブアレーに移動通信で要求される
適応的なビーム形成能力を与える画期的なアルゴリズムとして、M-CMA(Modified Constant
Modulus Algorithm)を発明した。提案アルゴリズムは通常のCMAで用いられる解析
的な係数更新に加えて、摂動による係数推定手法を組み合わせたもので、所望信号にビー
ムを形成出来るだけでなく、干渉方向に深いヌルを形成することができる。この特性を
理論解析により示すだけでなく、計算機シミュレーションによって確認している。また、
理論値にほぼ一致する優れた信号伝送特性をもつことを示している。
一方、高速信号伝送システムにアダプティブアレーを適用した場合にはおびただしい
数の遅延波が発生し、アンテナの自由度を直ぐに越えてしまい、著しい特性劣化が発生
するという問題がある。この問題を解決する方法に時空間信号処理の適用がある。この
方法は遅延波はアダプティブアレーで取り込み、後続の時間信号処理で等化し、アンテ
ナの自由度は他局からの干渉波抑圧にのみ用いることで、高い信号伝送特性を達成でき
る。そこで、マイクロ波信号処理アダプティブアレーに時空間信号処理を取り入れるこ
とを検討し、M-CMAを時空間信号処理に拡張する方法を述べている。その特性を理論的
に検証すると共に、計算機シュミレーションによって確認している。その結果、時空間
信号処理を適用したマイクロ波信号処理アダプティブアレーは、時間軸信号処理で等化
出来る範囲の遅延波は取り込み信号伝送特性を改善させ、等化出来ない程の大きな遅延
波にはヌルを形成できることを示している。また遅延波の存在にもかかわらず、優れた
信号伝送特性をもつことも明らかにしている。