TR-AC-0040 :2000.3.17

藤野義之

電力受電用円筒コンフォーマル レクテナアレーの研究

Abstract:マイクロ波電力伝送は高々度無線中継システム[1,2]や,太陽発電衛星[3,4]に代表される宇宙空間で のエネルギー伝送や,ロボット応用などの分野で大変興味深い技術である.宇宙空間でのエネルギー伝 送に関しては,1993年に行われた宇宙空間での親子ロケット間のマイクロ波送電実験である METS(Microwave Energy Transmission)実験[5,6]をはじめとして,近年では宇宙プラットフォーム上での 実験も提案されるようになってきている[7,8].また,ロボット応用に関しては,閉管路への応用を目指した マイクロ波無線電力伝送実験が行われている[9]. これらの実験で使われてきたマイクロ波受電用レクテナは,全て平面形状であり,希望する受電装置の 表面に沿って取り付けられるコンフォーマル形状をしているものは見あたらない.マイクロ波電力伝送に おいてはアンテナ正面方向での電力の送受電における効率の向上が最優先の課題であるため,それに 有利な平面形状が大半であったと考えられる.しかしながら,当該技術の応用分野の拡大に伴って,平 面レクテナアレーの取付けが不可能な場合も想定されるため,このようなコンフォーマル形状に対応した 受電用レクテナアレーの実現可能性を検討することは,重要な課題である. 著者らはそのための第一歩として,円筒導体上に取り付けられたレクテナアレーに関して検討を行った. これは,レクテナ素子を円筒導体上に配置し,これを円筒径方向にアレー化することで,マイクロ波の入 射角が円筒径方向で変動しても出力電力の変動を最小限に抑えられるレクテナアレーであり,円筒形を した装置に対して容易に取り付けることができる.このような円筒導体上にレクテナを構成した場合,平面 レクテナアレーと比較してレクテナ素子ごとの入射電力の変動が大きくなるため,出力電力の低下は避け られないが,低下量の程度を計算することで,効率が実用的な範囲に入るかどうかに関して検討を行っ た. また,実用的なレクテナアレーを構成するためには,レクテナ素子を直列または並列に接続して出力 電力を増加しなければならない.入射電力の違うレクテナ素子を複数接続したときの出力電力低下に関 しては,シミュレーション計算等の手法により以前から検討[10]が行われており,最近ではレクテナ素子の 出力電流電圧特性を使ったモデル計算が行われているが,両者とも,円筒形レクテナアレーに関し ての結論は見あたらない.そこで,円筒形レクテナのアレー化において,負荷抵抗の接続を変化したとき のレクテナアレーの出力電力の変化に関して主に実験的な検討を同時に行い,一部のレクテナ素子の み並列に接続した場合の方が全素子を並列接続した場合より出力電力が大きくなることを示した.また, これを任意素子数のレクテナアレーに拡張することで,円筒形レクテナアレーに対し,出力電力が最大と なる並列素子数を求め,当該レクテナアレー設計上の一指針を得た. 本レクテナアレーの応用分野の一例としては,円筒状をした宇宙用の多関節ロボット等へのマイクロ波 電力伝送などが挙げられる. 本研究はコンフォーマルアクティブ集積アンテナとしてのレクテナアレーを目指した点において,空間 適応インターコネクション技術の一環をなすものである.