下川信祐,新上和正
横断するデザイン
-モノと人との関係性-
第1部
Abstract:デザインとは,人間が取り巻く周囲に対して"何らかの価値"を発見し,周囲に対して働き掛けを行なう
知的な活動の1つです.
自然界に存在するモノを単に眺めるだけでなく,それに何らかの工夫を加えること意味し,
長い人類の歴史を通じて人類が行ってきた活動です.
"デザイン"という語は,ラテン語のdesignareに由来する.
designareとはsign(=指示・表示する)を指し,次の二通りの意味を持っている.
1つは,企画や計画を建てるという意味と,二つ目は工夫や趣向を凝らしたり,装飾的な工夫を施すと言った
"意匠"の意味を持っている.
デザインは日常生活の様々な領域で生じる.
これは,デザインという語に様々な接頭語が付いていることから容易に分かる例えば,システムデザイン,
政治や経済の領域での戦略デザイン,機械工学での機械デザイン,薬のデザイン,デバイスデザイン,
物質デザイン等々.デザインという語を日本語の設計という言葉で置き換えれば,
更に日常的に聞き慣れた語になる.
この解説は,企画や計画を建てるという1番目の意味のデザインについて考えます.
更に,工学的な意味合いを強めてデザインという語を使うことにします.
"工学的な意味合い"とは,上記の「"何らかの価値"を発見し,取り巻く周囲に働き掛けて行く」という場合には,
通常では行為の主体は,"自分"です.
そして,働き掛けによって生じる結果も"自分(自分を含む社会)"に属すことになります.
これに対して,あるモノを計画し企画する人(=デザイナー)とそのモノの有難さを享受する(=普通,
利用者とかユーザーで呼ばれる)人が,一般的には違う場合を想定することにします