栗田知好,本多清志,垣田有紀
口唇の調音動作を実現する生理学的モデル
Abstract:対話における情報の伝達手段は、通常、音声によるコミュニケーションであることは
言うまでもないが、難聴者による音声知覚、または、騒音環境下における会話では、音
声の情報伝達が妨げられ、コミュニケーションの障害となっている。このような環境下
では、音声聴取の障害を補うための手段として口唇形状等の視覚的言語情報による知覚
が重要となる。
本研究では、このような視覚的言語情報の特徴を明らかにするための手段として、ま
た、発話における口唇の調音過程のメカニズムを解明することを目標として、口唇の生
理的調音モデルの作成を行なった。口唇のモデル化に必要な口唇周囲筋の筋電図学的基
礎検討を行ない、口唇閉鎖と円唇化における口唇周囲筋の相互作用のメカニズムを明ら
かにした。この結果に基づき、口唇周囲筋の活動から口唇形状の変化を生成する口唇モ
デルを重回帰分析を用いて作成し、口唇輪郭の計測データと口唇周囲筋の筋電信号デ
ータを用いてこのモデルを評価した。