TR-A-0151 :1992.8.28

近江政雄

両眼視差が連続的に変化する剌激の奥行き知覚

Abstract:垂直軸あるいは水平軸のまわりに傾いた平面の水平両眼視差は連続的に変化する。垂直軸のまわりの傾きに対しては一方の眼の網膜像が水平方向に拡大され、他方の眼の網膜像が縮小される。水平軸のまわりの傾きに対してはそれぞれの眼で反対方向に網膜像のずれが起こる。いずれの場合でも、視野の中心においては水平両眼視差が零であり、周辺に向かうにつれて水平両眼視差の絶対値が連続的に増加する。したがって水平視差を持たしたランダムドットパターンを呈示すると垂直軸あるいは水平軸のまわりに傾いた平面が知覚されるが、視野の中に奥行き方向のエッジがない場合には面の傾きの知覚が減少ないしは消滅するといわれている。これは両眼視差による奥行き知覚の感度が低空間周波数で低下することや奥行きに関してクレイク・オブライエン効果があらわれることからも支持される。しかしながらこれまでの両眼視の研究で用いられてきた視野が比較的小さかったために、奥行き知覚をもたらすために水平両眼視差の不連続な変化が必要であるという主張は必ずしも実験的に証明されているとはいえない。そこで本報告では、大きな視野内において水平両眼視差が連続的に変化する刺激を呈示し、その奥行き知覚を検討した。