TR-A-0148 :1992.8.7

早川秀樹,西田眞也,川人光男

画像の不連続を利用した陰影からの形状推定

Abstract:本稿では、画像の不連続と濃淡情報を用いたshape from shadingの統合モデルを構築した。 このモデルでは、面の向きの推定に大きな制約を与え得る3次元の形状エッジの替わりと して、近似的に2次元の画像エッジを用いた。その結果、外縁線拘束のような初期条件を 与えなくても、良好な形状推定を行なうことが可能となった。

また、面の向きの推定アルゴリズムにおいて、画像生成過程の順モデル・近似逆モデル 及びなめらかにするための緩和計算である面の向きの内部モデルを用いることによって、 安定した解を少ない繰り返しで得ることができた。但し、なめらかにする緩和計算につい ては、マルチグリッドや不連続を考慮したガウシアンフィルタなどについて検討する必要 がある。尚、この推定アルゴリズムは、筆者のひとりが運動制御の分野で提案している腕 の軌道生成モデルと構成がほば同じであり、入力部である視覚の問題から出力である運 動制御の問題まで一貫してモデル化できることを示唆している。

さらに、この統合モデルによる数値シミュレーションでは、なめらかさの項を一定にし たままでも不連続な形状も扱うことができ、簡易な高次情報からのフィードバックによりself-shadowを含む形状や多面体も、うまく推定することができた。

そして、我々がこの統合モデルで用いている「不連続を生成するような画像強度の変化の 大きい部分の情報が重要である」という考え方は、一般的に初期視覚の問題でもよく言わ れていることであり、ある意味でこのモデルは人間の視覚機構を模擬しているかもしれ ない。

最後に、今後の課題としては、現在既知としている元源方向の傾斜角を推定すること、 また最初に求めたまま固定されている、不連続や光源方向の方位角を形状の推定値から修 正することなどが上げられる。特に不連続の修正は、エッジ検出の改善や知覚における主 観的輪郭に大きな関連があると思われる。