西田眞也
帯域制限ランダムドットに
誘導される正方向の運動残効
Abstract:空間周波数の帯域を制限したランダムドットキネマトグラムに対する運動方向弁別率
と運動残効を測定し、両者の移動距離に対する依存性に、明瞭な食い違いを見いだした。
特に、刺激中の最低周波数の半周期付近の移動距離において、知覚運動に対し正方向の
運動残効が誘導されることを発見した。このような食い違いは、全方向の周波数成分を
含む二次元帯域制限パターン、運動方向に一致する水平周波数成分のみを含む一次元帯
域制限パターンのいずれを用いた場合にも見いだされた。運動知覚と運動残効の食い違
いは、両者を媒介する機構が同一でないことを示唆している。運動残効の移動距離依存
性が、(輝度の流れから直接運動を検出する)一次の運動検出器の順応から予測される
ものに一致したことから、帯域制限ランダムドットに対する運動知覚には一次の運動検
出器以外の機構が関与していると考えられる。その候補として、ビートパターンの運動
を検出する二次機構が考えられる。