村上由彦
神経回路モデルを用いた
重なったパターンの分離
Abstract:近年、多くの人々によって、神経回路モデルをパターン認識に応用しようとする試み
がなされている。その多くの場合、認識を行ないたいパターンセットについて、それぞ
れのサンプルを入力し、出力に各カテゴリに対応するユニットを設けて、そのユニット
のみが出力し、その他のユニットは出力しないように学習を行なう。この種の神経回路
モデルは、パターンセットをカテゴリ分割する機能に優れており、文字認識や音声認識
などに応用されている。しかし、物体の認識のような画像処理に神経回路モデルを適用
した場合、工学的な応用を考えると、そこにあるパターンがどのカテゴリに含まれるか
を知るだけでは不十分であり、シーンの中でそのパターンの位置や状態を知らなければ、
部品検査やロボットの目になるようなシステムを構築することができない。
一方、人間の情報処理機構を考えると、このようなパターン抽出機構は「注意」とい
う概念で与えられる。すなわち、ある物体(パターン)に注意を向けるとその物体だけ
がそのシーンの中から浮かび上がってくる。このような機構は、一つの考え方として上
位の処理レベルから下位への処理レベルヘの情報の伝達によって実現されていると考え
られる。このような神経回路モデルを構築するには、入力パターンより記憶パターンを
再現する機構(連想記憶)と神経回路自身を制御する機構(選択的注意)を持つ必要が
ある。
そこで、神経回路モデルに対して連想記憶の検討を行ない、モデルの変更によってこ
のような選択的な注意の機構を導入するにより、パターンの抽出を行なうことを検討す
る。特に、ここではパターンが重なり合った場合について、個々の図形を切り出すこと
に目標をおく。