TR-A-0102 :1991.2.6

早川秀樹、乾敏郎、川人光男

陰影による形状知覚と単眼立体視モデル

Abstract:視覚情報処理の役割は、網膜に投影された2次元画像データから外界の3次元情 報を推定することにある。しかし、2次元画像データの中には、両眼視差による情 報・運動による情報・陰影の情報・テクスチャーの情報など、様々な要因が混在し ており、これらを総合的に解明するのはかなり困難なことである。Marrはこの ような複雑な問題に取り組むために、モジュール設計の原則に基づいて、”視覚モ ジュールとその統合”という考え方を導入した。視覚モジュールには、立体視、運 動からの構造復元、オプティカルフローからの奥行き推定などがあるが、中でも陰 影からの形状復元を行っている部分は、その情報が認識を行う上で重要であると考 えられている。 このような重要性を持っている陰影からの形状復元という課題は、"Shape from Shading"として、コンピュータビジョンの分野でも、長い間、多くの人々によ って研究されており、工学的に有意義な成果も幾つか出てきている。一方、心理学 の分野では、人間が陰影などから3次元形状を知覚することを"単眼立体視"と呼 んでおり、ここ数年ほどの間にTodd & ReichelやRamachandranによって その知覚に関する様々な心理学的知見が得られている。ここでは、従来の"Shape from Shading"とは違う立場を執り、視覚情報処理のモジュールとして、それらの 心理学的知見を説明でき得るような新しい単眼立体視モデルを提案し、そのモデル に基づいて2次元シミュレーションを行ったので、ここに報告する。