TR-A-0079 :1990.3.30

大山玄

日本人発話の英語及び外国人発話の 日本語のプロソディに関する研究

Abstract:日本人が発話した英語と米人が発話した英語、及び外国人が発話した日本語 と日本人が発話した日本語の、主にプロソディーについての相違を合成音声を 用いて検討を行った。日本人が典型的な日本人的な読み方で発話した英文及び、 外国人がその母国語に影響された様な読み方で発話した日本語の発音、及びプ ロソディーに関する3要素を、米人話者及び日本人話者が読んだ同文の同じ種 類の要素で入れ換えた合成音声を作成した。各要素を様々な組合せで入れ換え て作成した合成音声を用いて、プロソディーのどの要素が英語らしさ(自然な 英語)又は日本語らしさ(自然な日本語)を増加させるのに貢献するかについ て、米人及び日本人を被験者として聴取実験を行った。プロソディーに関する 要素としては個々の母音・子音の持続時間、基本周波数の時間変化、および強 度の時間変化の3種類である。又音声変換方法としてはPARCOR分析変換 合成方法を利用した。その結果、英語についても日本語についても、英語らし さ、日本語らしさに貢献しているのは、発音よりもプロソディーの方であり、 プロソディーの中でも、特に基本周波数の時間変化や音素の持続時間が強度の 時間変化より貢献することが判明した。言い替えれば、リズムの大切さが示さ れた。この研究結果は、効果的な英語及び日本語の音声指導、ひいては、英語 及び日本語の自習機等の開発にもつながるものと考えられる。 この研究は1984~5年に東京大学言語センター英語科の鈴木博教授が米 国Speech Technology Laboratory(STL)所長脇田寿博士の発案と協力 により同研究所で始めたものであり、それを大山玄がその後発展させたもので ある。 次の章で音声変換法、取り上げるパラメータについて説明し、3章で音声資 料と被験者について説明し、4章以降で各聴取実験について説明する。日本人 発話英語については4章で米国で行った予備実験、5章、6章で本実験につい て説明する。7章で外国人発話の日本語についての実験について説明する。