ローラン・ドゥマニ(著),上田和夫(訳)
音の高さの知覚
--「音響心理と聴知覚」より--
Abstract:本論文は4節からなっている。前半の2節は波形が正弦波である音、即ち純音の音の高さに関するも
のである。第1節では純音の音の高さについて、まず、記述的、あるいは現象的角度から、ついで第2
節ではより説明的、神経生理学的角度から考察する。これに続く2節は、純音ではなく、「複合」音に
よって生ずる音の高さの感覚に関するものである。これらの音についても純音と同様に、まず最初は観
察される現象の記述に専心し、現在ある説明仮説についてはその大略だけを示すこととしよう。これが
第3節の目的である。この節では、音声の母音部や、従来の楽器が出す音の大部分を近似できる、いわ
ゆる「調波的」複合音について特に注目しよう。これらの音に関しては、音の高さの二つの側面を区別
する必要がある。音色の一つである「生の」高さと、メロディーを構成する要素である「基本音の」高
さである。本論文では基本音の高さをはっきりと特別なものとして扱う。そして、第4節はこの高さの
一つの側面を抽出できる可能性のあるメカニズムのために割かれている。