TR-A-0045 :1989.1.12

城和貢

Alliant, Convex, Ncubeの アーキテクチャとパフォーマンス

Abstract:その誕生以来、より速く走ることを運命づけられてきた計算機は、画像処理・音声認識から近年のニューラルネットワークに至るまで、膨大な計算量を迅速に処理することが期待され、要求され、義務づけられている。そして、その高速化を実現するために、さまざまの計算機アーキテクチャが提案され、製品化されてきている。これら高速化のためのアーキテクチャには、スーパーコンピュータに代表されるようなパイプライン、ベクトル化処理、近年のワークステーションに代表されるようなRISCアーキテクチャ、ミニコンピュータ以下の複数のCPUを同時に実行させる並列計算機等、が知られている。 特に、スーパー・ミニコンピュータの分野では、これら高速化の手法を取入れ、低価格でスーパーコンピュータに迫るパフォーマンスを実現しているものもある。 このミニ・スーパーコンピュータと呼ばれる新しい分野での代表的な計算機には、Alliant、Convex、Ncube、等がある。ConvexはCray-1に代表されるパイプライン・ベクトル化の手法に基づく計算機であり、既存のFortranプログラムの自動ベクトル化により効率の良い処理が可能である。Alliantは共有メモリ方式の密結合型の並列計算機であり、それぞれのCPUでベクトル化が可能なため、プログラムの組み方により、かなりの計算能力を引き出せる。Ncubeはメッセージ通信による完全分散メモリ方式の疎結合型の並列計算機であり、最大1024個のCPUを有効に利用できるアルゴリズムに関しては絶大なパフォーマンスを可能とする。 本稿ではATRで所有しているConvex, Alliant, Ncube, のアーキテクチャについての概説をする。ただし、ATR所有の機種はConvex C1, Alliant FX/8, Ncube-10 (512node)であるが、アーキテクチャの説明にはそれぞれの最高機種であるConvex C240, Alliant FX/80, Ncube-10 (1024node)を用いる。