TR-A-0009 :1987.7.9

横澤一彦,佐藤隆夫,梅田三千雄

高速視覚刺激提示装置 ATRタキストスコープ

Abstract:高度なマンマシンインターフェースを実現する為には、人間の行動特性を詳細に調べる必要がある。そのためには、人間の視覚、聴覚、記憶、思考などの諸特性を調べていかなければならない。特に、人間の視覚機構ではそれを解剖学的、生理学的に調べることが難しいので、主に心理物理学的、認知心理学的に調べることになろう。 視覚機構を心理物理学的、認知心理学的に調べる為には、被験者としての人間に何等かの視覚パターンを刺激として提示して、被験者から何等かの反応を採取できる装置が必要である。しかも、例えば文字の認識過程などを分析するには、人間が1文字を数十ミリ秒という早さで認識し終わってしまうので、高速の視覚刺激提示装置が必要である。 現在のエレクトロニクス技術を駆使すれば、1ミリ秒単位で提示時間を正確に制御できる高速視覚刺激提示装置の開発は可能である。 そこで、視覚研究室では視覚研究を進める為の基本ツールとして、高速視覚刺激提示装置ATRタキストスコープを開発した。この装置は、 i)どんな複雑さの視覚刺激パターンでも短時間に提示できる。 ii)視覚刺激パターンの作成や変更が容易である。 iii)視覚刺激パターンの提示時間や提示時間間隔を高精度で制御できる。 iv)被験者の反応データを取込んで分析するのが容易である。 などの特徴を持ち、次章で紹介する従来の刺激提示装置それぞれの長所を残し欠点を補った新しい実験装置である。本報告では、ATRタキストスコープのハードウェアを中心にその機能と使い方を紹介する。視覚研究室では、このATRタキストスコープを制御するソフトウェアも併せて開発したが、そのソフトウェアについての紹介は、別の報告に譲りたい。